この研究の主な目的は良質なダイヤモンド薄膜および粒子の成長、ダイヤモンド成長時の活性種の解析及び異種下地表面におけるエピタキシアル成長を試みることであった。 直流放電およびマイクロ波放電を利用してダイヤモンドの成長を行なったが、成長速度の面においては、前者をもちいた場合、10〜20μm/hの範囲でかなり高品質の薄膜がえられた。小量の無定形炭素の混入を無視すれば100μm/h以上の成長速度が得られている。不純物の混入の点において後者は無電極放電であるので有利と考えられるが、ここで用いている直流放電がかなり高い気体圧力下(200Torr)で行なわれているためSIMSの測定においても電極材料などの不純物は検出されなかった。 直流放電CVD法において、プラズマの評価を行なった。ダイヤモンドが成長している状態のプラズマの気体温度は約5000K、電子温度は約100000Kであることがあきらかになった。また熱平衡定の計算よりプラズマ中には中性の炭素原子と水素原子が99%以上存在することも見出された。これら活性種が下地表面でどのような反応をしているのか現在のところ明かでないが、原子状の炭素と水素を準備することが重要であろう。 以上の実験において、いくつかの下地を用いて薄膜成長を試みたが、それぞれの場合において多結晶状の成長しか見られなかった。そして薄膜の表面には白形が現われ、平坦な表面をもつ薄膜は得られなかった。 そこで水素放電中でも表面状態が安定と考えられる立方晶窒化ほう素(cーBN)を下地としてもちい、その表面での成長を試みた。その結果、cーBNの(111)および(100)においてダイヤモンド薄膜のエピタキシアル成長が観察された。下地温度、活性種の過飽和度などの制御にいくつかの問題は残されているが、原理的にはダイヤモンドの単結晶薄膜の成長が可能であることが明らかになった。 粒子状のダイヤモンドの成長は可能であるが、良質の単結晶粒子を得ること、さらにはこれら粒子を多量に成長させることが今後の問題として残されている。
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