研究概要 |
本研究の最大の特長は, 従来の薄膜EL素子において不可欠であったガラス基板を全く使用せず, またそれの絶縁層を高比誘電率焼結体セラミックスに置き換えることによって, このセラミックス自体がEL素子の基板を兼ねていること, 及び薄膜絶縁層とは異なり, 焼結体絶縁層を採用しているため容易に高比誘電率を有するセラミックスを実現することが出来る点にある. 本年度は, 先ず, 発光層母体であるZnSを前記セラミックス上への形成に先立ち, ガラス基板上にヂエチル亜鉛(DEZ)-二硫化炭素(CS_2)原料ガス系を採用したMOCVD法により膜作成を行った. その結果, 成長したZnS膜は, X線回折データ並びに膜の透過率スペクトルから算出したバンドギャップは3.79eVと言う結果から, EL素子に有利な六方晶ウルツ鉱構造であることが判った. その(0002)X線回折ピーク半値幅も0.18°と小さく, 極めて高品質のZnSが成長していることを明らかにした. ここで確立したMOCVDZnsを薄膜EL素子の発光層として採用し, 且つこの素子の絶縁層をBaTiO_3系焼結セラミックスに置き換えることによって, 低電圧駆動高輝度薄膜EL素子実現を目指した. この絶縁層兼基板として市販のコンデンサ材料でもある焼結びBaTiO_3セラミックスを採用し, その厚さを0.2〜0.3mmに研磨したディスク上に前述の高品質MOCVDZnS膜の形成としかる後のMn不純物ドーピング条件及び最適発光層を形成するためのBaTiO_3セラミックスの研磨, 表面処理条件並びに本研究を遂行するために好都合なBaTiO_3ディスクを得るための粉末成型から焼結に至る工程についても詳細に検討した. そして, ZnO:Al透明電極/MOCVDZnS:Mn/BaTiO_3セラミック絶縁層/Al金属電極構造を有する薄膜EL素子を作成し, その電気的, 光学的評価を行った. その結果, この素子において, 発光開始電圧10V以下, 最高輝度焼く6000nt, 最高効率11lm/Wを得た.
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