研究概要 |
磁性流体は磁力に対して強い吸引反応を示す流体であるが, その一方において光に対してもきわめて特異な偏光特性を示すことが知られていた. そこで, 本研究にあっては, まず磁性流体を一枚の透明ガラスでサンドイッチすることによって薄膜状とし, これを磁場中においた. すると磁性流体中の微粒子の配列12方向性が生じることが確認され, これに伴って偏光性が発生することが見出された. そこで試作した横ゼーマンレーザから発する直交二成分光をここに照射したところ, 磁性流体膜を透過したビームには偏光による偏光面の旋回が生じ, その結果として二成分光の間には位相差が大きく生じた. 流体の組成による差はあるものの, 2000ガウス程度の磁場中にあって, 偏光面は数10度から180度位まで回転していることが判明した. これは極めて大きな値であるが, この測定にあたってはΛテロダイン法によって高精度な計測を行うことによって確認をはかっている. 次にこうした特性の応答性を調べるために, 磁場に変調を加えることにより周波数応答を測定した. その結果5KHz程度の時間的変動に対しては十分な応答性を示した. たゞし, これ以上の速さに対しては使用したマグネットの特性上, その応答性を確認することが不可能であった. しかし, この範囲であれは, その偏光性を利用したいくつかの応用が考えられる. その一つは可動部をもたない光スイッチである. 透過性にやゝ難はあるものの一つの応用例となしえた. また, 次には光分岐素子を試作し, ビームを二つの方向へと任意により分けることを試みた. 磁場の変化に応じて, 設定した二つの方向へ強度〓で98対2位までの割合でビームを任意12に分岐することが可能となった. また光アイソレータとしての応用も十分な可能性があるために, 今後もトライをつづける予定である.
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