研究概要 |
金属薄膜表面上に励起された表面プラズモンが, 弾性表面波(SAWと記す)による動的グレーティングからどのような影響を受けるかを明らかにしその効果をガス系および液体中の化学センサに応用することを目的としている. そのための基礎となる理論と現象の検討を行った. 1.基礎理論 光表面波は動的グレーティングによりラマン・ナス回析を受け, 空間的・時間的(周波数)に変調されるため一次回折光の反射に異常を生じることがわかった. そのため回折効果の大きなSAWモードを用いることが必要である. また液体中での反応解析を行うため固体/金属膜/液体系の表面波の解析が必要となった. そこで固/液界面を伝搬する波動の厳密な計算を行った. その際, 液体の粘性を介して変位, 応力が境界で連続という条件を導入した. この厳密計算は本研究が初めてであり, さらに界面を減衰することなく伝搬する表面波モードを見い出した. このモードの応用として粘性センサの提案を行った. これらの結果により液体中においても光とSAWの相互作用を効率よく生じさせる見通しが得られた. 2.基礎実験(1)1で見い出した固/液界面を伝搬するSAWモード励振の基礎実験により理論の正しさ及び, 粘性センサの可能性が確認された. (2)(1)の実験に付随してSAWによる水の流動現象を発見した. これは水の非線形現象であるが光との相互作用にどのようにかかわってくるかはこれからの検討課題と考えている. (3)動的グレーティングによる光のラマンナス回折の実験を行った. それを二次元平面内を伝搬するSAWの振幅分布の測定に応用し, 波動の二次元性から生じる場の問題を明確にすることができた. (4)化学量を検出する場である基板表面上に累積したL-B膜の膜評価を行った. その結果L-B膜の欠陥の大きさ, 量, 由来などを指摘することができた.
|