金属薄膜表面上に励起された表面プラズモン(SP)と弾性表面波(SAW)による動的グレーティングの相互作用について理論的・実験的検討を加え、その機構を明らかにし、その結果をガス系および溶液系の化学センサに応用することが本研究の目的である。二年間の研究を通して次のような成果が得られた。 1.ラマン・ナス一次回折光における新たなSPの励起の観測 SPと同時にSAWも励振できるプリズム素子として圧電結晶LiNbO_3、500〓の金薄膜、128°回転YcutX伝搬のSAWとし、100MHz励振を行った。その結果、LiNbO_3の異方性に基づくラマン・ナス回折の正常・異常回折が発生し、さらにそれぞれの一次回折光に新しいSPの励振が実験的に見い出された。LiNbO_3の異方性、およびSAWは縦波ー横波成分の合成されたモードであるため、回折現象が複雑になっているが、SAWの摂動に基づく新たなSPの励起が観測されており、今後それらの現象を明らかにする。 2.SPによる免疫反応の検出 SPとSAWの相互作用を化学反応の検出に応用するための基礎実験としてSPによる免疫反応の検出を行った。プリズムはBK7を、金薄膜上に有機膜を化学的に付着させ抗体(抗ーαフェトプロティン)を固定化した。これに抗原を反応させ、抗原・抗体反応、さらに抗原の酸による解離現象・再び抗原・抗体反応などの検出をSPの角度変化として検出することができた。 3.SAWを用いた化学センサの設計 溶液系での化学反応、免疫反応によってSAWの音速がどうかわるかを調べるため、溶液SAWセンサの設計を行った。SAWのモードと、材料について計算を行い、基礎実験により確めた。
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