延性破壊の形態は、ほぼ2種類に分類される。その一つはすべり面剥離であり、他の一つはボイドの生成合体によるものである。しかし一般の構造用材料では、すべり面分離だけで破断に至ることはなく、その主たる機構は後者のボイドの生成合体過程である。しかし、ボイドの生成過程は、材料内部の現象であるため、実験でこれを解明することは大変困難である。 本研究では、円周切欠き付き丸棒の引張り破断実験において超音波探傷法を使用し、ボイドの発生・成長から破断に至る迄の過程を連続的に測定した。この時、試験片には炭素含有量の異なる2種類の材料を使用して、第2相粒子の分布、および、切欠半径の異なる試験片を用いて、応力3軸度のボイドの生成過程におよぼす影響を調べた。また、引張破断実験後、試験片の破断面を走査型電子顕微鏡で観察し、ボイドの痕跡であるディンプルの大きさと個数の分布を計測し、ボイドの生成状況と応力3軸度および第2相粒子含有率との関係を推定した。この結果以下の知見を得た。 (1)応力3軸度が大きくなるに従い、先行ボイドの発生数は増加する。この傾向は第2相粒子の多い材料ほど顕著に現れる。 (2)第2相粒子の増加につれて材料は脆性化し、応力3軸度が大きい程破断面に対してへき開の占める割合が大きくなる。 (3)上記の2点の観察結果と超音波による測定の解析結果との間には矛盾する点は認められない。 このような結果から、ボイドの発生・成長の過程を連続的に調べるのに超音波の減衰とへき開による減衰との区別をする必要があるが、これは超音波の周波数を変えた測定をすることにより可能であると思われる。
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