研究概要 |
宇宙往環機は次の時代の大陸間旅客機として最近再び注目を集めているが, 実用化に至るまでには多くの問題を解決していかなければならない. その問題の一つは, 高高度, 超音速流中での水素燃料の着火および燃焼の問題である. この着火を容易にし, 燃焼を促進する方法の一つとして着火および燃焼性の強いシランを添加することが考えられている. しかしながら, シラン・水素混合気の着火および燃焼機構がまだ十分に解明されておらず, これらの化学反応機構も含めて研究されなければならない点が多くある. 本研究では, 衝撃波管を使ってシランと水素の混合気体の着火および燃焼機構を解明し, その詳細な反応機構を開発し, 着火および燃焼のモデリングを行ってスクラムジェットにおける応用の可能性を調べる. 本年度はシラン・酸水素混合気の反応機構を開発するために, 反射衝撃波後方の一様な温度, 圧力場を使ってOHの3064〓での紫外発光よりシラン・酸水素混合気の着火遅れを測定した. 米国NASAのグループが低温で行ったデータと一致した結果が得られ, 彼らの得ていない高温での自着火データも得ることが出来た(1988年1月の米国航空宇宙学会発表). このシラン・酸水素混合気の自着火遅れは1000kを境にして二つの傾き(温度に対して)を持っており, 低温ではシランによる自着火が支配し水素燃焼を促進するという効果を明らかに示している. 1000k以上の高温では, 温度が高くなる程水素による自着火が支配的になることが判明した. 現在, この自着火の実験結果をもとにシラン・酸水素混合気の広温度領域での自着火および燃焼機構を開発している段階で, 1000k以下の低温での状態はモデリング出来る事が分かった. これと同時に, 感度解析も行って1000k付近でどのよう反応が起っているか詳しく調べている.
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