研究概要 |
構造用SUS304Lテンレス鋼の極低温疲労破壊機構について, CT試験片を用いた77K, 低速き裂伝ぱ域における実験から以下の結果を得た. 1 コンプライアンス法によるき裂長さ及び開閉口のため極低温用クリップゲージの試作と測定システムが完成した. データ採取整理を進めている. 2 光学顕微鏡, 走査電顕観察:疲労き裂周辺(50〜150μ)の領域には塑性変形に伴う微細な下部構造を持つ帯(詳細は後述)から成る領域が現われ, さらにこの中のき裂極近傍には高変形域として強度に腐食される領域(5〜10M)が存在する. この領域それぞさではおおきな硬度の上昇がみられ, また線型破壊力学から求まる塑性域との対応がみられた. 3 バルクから切り出した薄膜の超高圧電顕(2MV)観察:き裂から離れた領域では低密度の転位のみであるが, き裂周辺には応力想起Σマルテンサイトの帯が発達する. ごく近傍では大部分のΣがさらに塊状のα′マルテンサイトに変態しており, き裂進展はこれらα′, Σ変態相中を貫いて生じていることが明らかになった. 変態により比体積が1.7%増すことから, 変態の容易な極低温においては変態誘起き裂閉口による有効応力拡大係数の減少, 従ってき裂進展速度の定価が期待されることを示している. なお, 粒内破面のプラトー上には上述の組織と対応する微細な縞模様や突起の列などが観察された. 次年度に向かって, 伝ぱ速度とき裂開閉口の測定を温度条件を変えて行い, オーステナイトの安定なSUS310鋼の結果と比較して, 極低温での応力誘起変態のき裂伝ぱに及ぼす影響を定量的に評価する. 次年度には時効硬化Al合金について同様な観察, 測定を行ない, とくに析出相の低温での繰返し応力に対する安定性と疲労損傷, 伝ぱ速度との関係を明らかにする.
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