前年度の実験研究において、クロム基複合被膜の作製が、クロムー炭素合被膜をマトリックスにすることで比較的容易であるとの基礎的知見を得た。そこで本年は、さらに複合被膜の工業的応用へと発展させるため、粒子の種類と被膜中への複合量の相違について検討するためZrO_2、Al_2O_3の硬質酸化物粒子を採用し、これら複合被膜作製条件を検討するとともに得られた複合被膜の機械的性質をも試験した。その結果を要約すると、これら酸化物粒子の複合量は、ZrO_2よりAl_2O_3が有利で、酸化物の種類によって相違が認められるものであった。ZrO_2粒子の複合被膜は、含有量が少なく、昨年度検討したSiC、ダイヤモンド粒子の場合よりも少ない値を示し、電解溶中での粒子表面荷電状態が異なることが考えられた。それに対して、Al_2O_3粒子は多量に含有した被膜の作製が容易で30〜40vol%を含有させた複合被膜は、電析時の被膜かたさがHV1000〜1200の高い値を示し、従来工業的に用いられている硬質クロムめっきと同程度の値のもので、被膜の硬質化の向上には著しく効果を示した。 マトリックスであるCr-C合金被膜は、電析時が工業用クロムに比較して軟質である欠点があるが、硬質粒子を複合させることで硬質化が計れる新しい知見を得、その結果について報告した。
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