超硬質クロム基電析複合被膜は、Cr-C合金被膜をマトリックスとし、この被膜の熱処理による硬化特性を利用することで可能である。Cr-C合金被膜は、硫酸クロム (III) -ギ酸カリウム浴から電解析出で作製した。この合金被膜は、電析膜のかたさがHV680前後であるが数%の炭径を含有しているため加熱処理することで著しく硬化を示し、700℃で加熱処理したものはHV1750と高い値を示した。さらに加熱温度を高めた800〜1000℃では、HV1200〜1300に幾分低下したが高温かたさ特性の優れた被膜である。Cr-C合金被膜をマトリックスに硬質粒子SiC、ダイヤモンド、ZrO_2、Al_2O_3などの複合被膜作製の電解条件、得られた被膜の熱処理による硬化挙動、さらに被膜の耐摩耗性について試験研究を試みた。これら粒子の種類による複合被膜について概要を示すと、粒子の種類で被膜中への含有量に違いが認められた。SiC、ダイヤモンド粒子は、最大含有量が5wt%程度、比較的安定に得られるものは2wt%程度のものであった。ZrO_2粒子は、試験粒子の中で最も含有量が少なかったが、酸化物Al_2O_3は、30〜40Vol%と高い含有量の複合被膜の作製が可能で、この被膜は電析時のかたさがHT1000〜1200と高い値を示し、従来多く用いられている工業用クロムめっきとほぼ同程度までかたさが改善できる。このように硬質粒子の種類は被膜中への含有量に差異が認められ、この要因として、粒子の電解浴中における表面状態に相違のあることが考えられる。また2wt%SiCおよびダイヤモンドを複合させた被膜は、加熱処理による硬化挙動がマトリックスのCr-C合金と同様であったが、耐摩耗性は熱処理を行うことで工業用クロムより優れ、硬質粒子とマトリックスの硬質化による相乗効果の認められるものであった。
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