腐食性環境中の摩耗機構を調べるため、本年度は高接触荷重下(P=40kgf一定)で低炭素鋼の純水、食塩水中摩耗試験を行い、シビヤ-マイルド摩耗のせん移に及ぼす前腐食時間、溶存酸素量の効果等を求めた。また摩耗形態のせん移に及ぼすカソード防食効果を調べるため、種々の設定電位下で食塩水中摩耗試験を行った。得られた主な結果を要約すると、 (1)純水中では前腐食時間は摩耗形態のせん移に大きい効果を及ぼす。前腐食時間が短いときシビヤ摩耗、ある前腐食時間でシビヤ-マイルド摩耗のせん移が起こり、その時間以上ではマイルド摩耗となる。 (2)0.5wt.%食塩水中では、溶存酸素量の調べた全範囲(DO〓0〜18mg/l)でマイルド摩耗が支配的であり、DOの減少とともに摩耗率は低下する。一方0.01wt.%食塩水中では、DO〓2〜18mg/lの範囲ではマイルド摩耗であるが、DO≦2mg/lでシビヤ摩耗にせん移し、焼付きに至る場合がある。 (3)0.5wt.%食塩水中ではDOに関係なく、防食電位E=-0.50〜0.80V(VS.Ag/AgCl)の範囲ではマイルド摩耗が優勢であるが、E≦-0.90Vになると完全なシビヤ摩耗となり、焼付きが生じる危険がある。 次に純水中、食塩水中で純鉄と純銅のフレッチング試験を行い、摩擦・摩耗挙動に及ぼす水溶液中の溶存酸量DOの効果を調べた。得られた主な結果を要約すると、 (1)純鉄の純水中および食塩水中フレッチングでは、DOが小さいとき摩擦は高く、DOの増加とともに摩擦は減少する。一方、摩耗はこれと逆の傾向を示す。 (2)純銅の食塩水中フレッチングではDOに対する摩擦の変化傾向は純鉄の場合とほぼ同様であるが、DOに対する摩耗挙動は食塩水の温度によって複雑に変化する。
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