研究概要 |
本研究の目的は耐摩耗, 耐高温の面で優れた特性を有しながら, 靱性の点で弱点を有するファインセラミックスについて, 耐摩耗特性も含めながら室温から高温までの耐衝撃特性を明らかにしようとする点にあり, 昭和62, 63年度の2年間を研究期間として遂行される. 当初の研究実施計画に記載した昭和62年度の研究内容は次の2点であった. すなわち, (1)本研究遂行のために開発した試験機を用いてセラミックス接合体を供試材料として繰返し表面打撃試験を行い, 衝撃表面摩耗損傷に関する評価を行うこと, および(2)室温下での曲げ衝撃強度と破壊靱性値の相関性について検討を加えることである. まず, (1)の点に関する研究はセラミックスの予想される使用途を考慮して, 金属基材にセラミックスを接合した構造体の表面を繰返し打撃してセラミックスの表面損傷および基材との接合箇所の破壊挙動を調べようとするものである. 本研究ではより広範囲の情報を得るため炭素鋼焼鈍材単体からWC-Co超硬材/金属基材接合体までの供試体について実験を行っており, 現在その結果をとりまとめ中である. 次いで(2)の点については衝撃3点曲げ強度評価の基礎データとして室温から高温までの静的3点曲げ荷重下での破壊強度データを得ており, また破壊靱性値評価に関連してEPMA観察による潜在欠陥寸法の判定を試みた. 後者の研究結果についてはすでに学術論文として投稿済みであるが, そこにおいて, SEM等で観察される空孔等の形状欠陥寸法ではなく, 破壊起点周辺に偏析する不純物元素Feの分布領域を欠陥寸法と判定すれば, セラミックスに内在する微小欠陥に対しても線形破壊力学基準で強度評価し得ることを明らかにした. なお, 衝撃3点曲げ試験については開発した試験機の調整および予備実験を終えており, 1,2ヶ月中に実験完了の予定である.
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