地下き裂の進展により生じる弾性波(AE:アコースティックエミッション)の、き裂代表寸法の10倍程度き裂から離れた領域における特性を調べ、き裂位置、き裂の大きさ、き裂方位の同定法及びき裂変形モードと弾性波エネルギーの相関の検討を行なった。得られた成果を要約すると以下の通りである。 (1)き裂から放出される弾性波により生じる周方向変位の周波数スペクトルは、無次元角振動数Ω(=lω/C_2、ω:角振動数、l:き裂代表寸法、C_2:横波位相速度)が1.5付近でピークを有し、したがって、き裂代表寸法はl=1.5C_2/ω_p(ω_p:計測結果におけるピーク角振動数)と評価される。 (2)三軸ホドグラム法で評価される弾性波放出源の位置と各観測点を結ぶベクトルを定め、これと各観測点で計測された変位ベクトルの作る面を決定する。これらの面の交線は、き裂面の法線となっている。このようにしてき裂面を定めると、弾性波の指向性を利用すれば各観測点間の変位比が定まる。この変位比と計測結果とが整合していれば、上述のようにして定めた面をき裂面として確定できる。 (3)開口型き裂進展では、き裂面垂直方向に最も高いエネルギーが放射され、一方、せん断型き裂進展ではき裂延長方向に最も高いエネルギーが放射される。開口型き裂進展とせん断型き裂進展を比較すると、せん断型の方がはるかに高いエネルギーの弾性波を放射する。このことは、開口型き裂進展は極めて捕え難く、また、混合型き裂進展においては、開口型の寄与が埋れてしまい、混合型き裂進展がせん断型き裂進展と誤認さやすいことを示唆している。 (4)縦波到達直後の変位ベクトルの方向は、観測点から見たき裂進展部位の方向を示している。せん断型き裂進展の場合縦波到達直後の変位ベクトルの方向を検出できない場合が存在する。このような場合には、横波到達直後の粒子運動軌跡から、き裂進展部位の観測点からの方向を同定することが可能である。
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