まず、特別な混合モード荷重用治具を製作し、アルミニウム合金A5083-0のコンパクト形引張-せん断試験片を用いて、混合モード比を広範囲に変化させて弾塑性破壊じん性試験を実施した。その結果、限界ストレッチゾーン幅SZWcが混合モード比に依存するのに対して、変形したき裂先端に沿う全ストレッチゾーン長さSZLの限界値は混合モード比によらず一定になることを示し、SZLが混合モード荷重下の延性破壊の微視的破壊力学パラメータとして有効であることを明らかにした。また、き裂進展開始時のJ積分の値は、靱性の低い材料では混合モード比によらず一定となるのに対して、靱性の高い材料ではモードII成分が大きい程高い値を示すことを明らかにした。さらに、試験片表面の予き裂の先鋭化部からせん断破壊が生じ、このせん断形のき裂が板厚中央部まで進展した後、板厚中央の鈍化部からディンプル破壊が生ずることを見出した。これらの破壊の発生について、試験片表面および板厚中央部における応力とひずみの特異性の形質及び静水圧引張応力の大きさなどを考慮に入れて定性的な説明を行った。これらの結果をまとめて、機械学会論文集へ投稿した。 つぎに、破壊進行領域内部の微視的延性破壊挙動を明らかにするために、き裂先端に比較的大きな空孔を考え、き裂と空孔との相互作用を考慮に入れた有限要素解析を行い、空孔がき裂の鈍化部に近い場合には楕円状に成長することを示し、鈍化部からき裂進展が生じた場合にはディンプル破面が観察されるという実験結果を説明した。また、空孔がき裂の先鋭化部に近い場合には成長することはなく偏平化することを明らかにし、先鋭化部からき裂が進展する場合にはすべりによる破面が生ずるという実験結果を説明した。これらの結果をまとめて、機械学会論文集に投稿した。また、FAR EAST FRACTURE GROUPのWORKSHOPにおいて発表した。
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