自動車の衝突特性は動的荷重、変位線図あるいはコンピュータシミュレーションによって評価されている。この荷重変位線図の計測法としては衝突時に発生する衝撃力を車載の加速度計により求め、車体のつぶれ量を高速度カメラにより求め、両者を合成するといった方法が採られている。しかし、この方法には多くの問題点があり、またコンピュータシミュレーションにも計算時間や精度の面で多くの課題があり自動車の衝突特性の正しい評価や特性向上を図る上で、大きな障害となっている。そこで本研究では、自動車用構造部材を対象として荷重を衝突台に発生するひずみから求め、変位を部材に取り付けた加速度計の出力を2回積分することにより求め、両者を合成して動的荷重、変位関係を求める新しい計測法を提案した。供試部材には薄板のプレス成形とスポット熔接により薄肉断面曲がり部材を各種作成し、衝突試験を実施し、これらの衝突特性を提案した方法により評価するとともにコンピュータシミュレーションを行いこれらの部材の衝突特性を向上するための方法について検討を行った。その結果、加速度の時間積分により部材の変形量が正確に求められ、手間のかかるフィルム解析を省略できる可能性のあることを明らかにした。また衝撃荷重を加速度と衝突総質量との積で与えるのは荷重を過大に評価することが判明し、より正確な衝突時の荷重を計測する方法が必要であり、今後の課題であることを指摘した。これが解決すればより正確でかつデータ処理の簡単な衝突特性評価法が確立されるであろう。また部材の衝突特性を簡便に評価するための弾塑性衝撃応答解析用プログラムを独自に開発し、パーソナルコンピュータ上で短時間にシミュレーションできることを確認した。しかし部材の特性を向上させるための方法について詳細に実験結果と比較するにはいたらず、今後の課題として残された。
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