電界放射型走査電子顕微鏡の観察画像に対応する2次電子信号を高速DMA型A/D変換器にて、直接マイクロコンピュータメモリに取込むとともに、画像処理ソフトウェアの開発を進め、0.1〜1Hzの動的な繰返し荷重下の連続した5画面分の観察画像を実時間で記録することを可能とした。実働荷重下の疲労き裂進展試験として、非定常変動荷重の代表である高、低2段変動荷重と定常な変動荷重の代表として2段繰返し変動荷重による試験を実施し、き裂進展挙動を直接観察するとともに、き裂進展方向、き裂先端開口変位CTOD、き裂先端周辺部の変形挙動、き裂進展速度などの定量測定を行い、疲労き裂進展機構の検討を行った。高、低2段変動荷重下では荷重変動に伴い、き裂進展方向を大きく変え、き裂はジグザクに進展する。き裂進展速度の低下はき裂閉口を考慮した有効応力拡大係数範囲ΔKeffの変化など巨視的な力学パラメータでは説明できないが、微視的なCTODとは良い対応を示すことを明らかにした。それに対し、2段繰返し変動荷重下では、き裂進展方向は余り大きく変わることもなく、また、CTODも高レベル荷重の負荷前後でほぼ同じであり、ΔKeffとCTODは良い対応を示した。なお、この場合も微視的なCTODがき裂進展の主要な支配パラメータであることが実証され、したがって定常な変動荷重下では巨視的なパラメータであるΔKeffでき裂進展速度の推定が可能であることが確認された。さらに過酷な実働荷重の例として弾塑性領域における変動荷重下の疲労き裂進展試験を実施し、変動荷重下の弾塑性疲労き裂の進展速度は繰返しJ積分範囲ΔJによる線形加算則で推定し得るが、繰返し荷重により一方向塑性変形を生ずる場合には、その変形をも考慮するため、J積分範囲にレンジペア的なカウント法を採用する必要のあることを明らかにし、そのことを破面フラクトグラフィによるき裂進展機構の検討を通じて確認した。
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