本研究は、耐疲労信頼性設計に際して非常に重要な量となる破壊確率を限られた少数個の実験データから推定させるを得ないという工学的現状を鑑み、データ数が有限個であることに基因する破壊確率推定の不確定性の評価を試み、所要の信頼度を達成するための最適試験片数の決定法を明らかにしたものである。本研究では、任意の荷重分布をもつ実働荷重を受けて部材中に累積する規準化損傷量を修正マイナー則を用いて算定し、さらに一定振幅の基準応力繰返し負荷下における部材の疲労寿命分布が対数正規分布に従うものと仮定して、当該実働荷重に対する部材の疲労寿命分布を理論的に導出した。次いで、一定応力振幅下における疲労寿命の分布母数の推定精度を勘案して、設計寿命間における破壊確率を標本確率変数として捕らえ、その分布を理論的に明らかにするとともに、「設計寿命間で破壊する確率がある小さな許容値(許容破壊確率)以下であるという判断に付与される確率が所与の信頼度以上である」とい設計哲理に基づいて、試験標本数、許容破壊確率、信頼度の間に成り立つ関係式を定式化し、さらに信頼度に及ぼす試験標本数の影響ならびに所与の信頼度を達成するための試験標本数の決定法を明らかにした。 一定応力振幅疲労試験結果のばらつきは対数正規分布もしくはワイブル分布によく適合するといわれているが、そのうちのいずれがより適切であるかについては未だ完全な結論を得るには至っていない。本研究では、母数推定量に関する従来の理論的研究結果を有効に利用でき、しかも小標本の場合にも厳密に適用可能であるという観点から、主として対数正規分布を用いて研究を進めているが、同時に2母数ワイブル分布についても標本数と母数推定精度との関係を明らかとした。位置母数を含む3母数ワイブル分布に関しては、parameter-freeな母数推定量の構築を含めて今後の検討課題である。
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