研究概要 |
微小き裂の伝ぱ挙動に注目して過小応力を含む二段繰返し試験を行い, 次の結果を得た. 1).過小応力σ_Lが疲労被害に与える影響は, 過小応力に切換えたときのき裂長さlと, 次式ΔK_<th>=3.3×10^<-3>(H_v+120)(√<area>)^<1/3>(1), σ_w=1.43(H_v+120)/(√<area>)^<1/6>(2)より推定されるlw, lwiの大小関係によって大きく異なる. l≦lwiの範囲では, 過小応力は疲労損傷としてほとんど寄与しない. 2).累積疲労損傷値Dは, 過少応力の負荷のしかたによってどのようにでも変りうる. したがって, これまでの研究報告の実験結果のうち統計的ばらつきと考えられたものの一部は, 過小応力と微小き裂の相互関係から再解釈することが可能である. 3).二段多重疲労試験において, 修正マイナー則に基ずく線形累積疲労損傷値の下限値Dminは, 過小応力が寄与しはじめるまでの過大応力の単独の疲労損傷値D^*にまで近ずく可能性がある. すなわち, l【equal or similar】lwiに達するまではσ_Lを負荷しても疲労被害として寄与しないために, l=lwiとなるまではσ_Hだけを負荷した場合が最も累積繰返し数比は小さい. その後はσ_Lが寄与するためσ_Hとσ_Lの組合せ方によってごくわずかのσ_Hでも破断に至ることが考えられる. このとき修正マイナー則に基ずくN_Lは非常に大きいのでn_L/N_Lの値は小さく, DはD^*とほとんど変らない値となる. 例えば, 本実験の繰返し数比の組合せにおいては, σ_H=284.2MPa, σ_L=215.6MPaでD=0.664〜2.111の範囲の値となったが, 繰返し数比の組合せを変えると下限値はDmin【equal or similar】D^*=0.28となる可能性がある. 同時にσ_H=284.2MPa, σ_L=156.8MPaではD=0.758〜1.129となったが, これも下限値はDmin【equal or similar】D^*=0.45となる可能性がある. このような理由からDの値はどのようにも変りうるが, 材料に初期欠陥が存在すると, Dは欠陥がないとして予想したDminよりさらに小さくなる危険性がある.
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