研究概要 |
繰返しに対して安定なS45C材を用い, 平滑材の低サイクル疲労寿命を微小き裂の発生, 伝ぱの立場から評価する一連の研究を数年来展開している. 本研究では繰返し硬化を示すSUS304材および軟化を示すWT80材, SCM435H材を取り上げ, これまでのS45C材について確立した寿命評価法がこの種の繰返し硬化・軟化型材の場合に適用しうるか否かについて検討した. 一定ひずみ振幅下および二段二重ひずみ振幅下の疲労試験を実施した. 疲労試験と並行して画像処理を利用した自動き裂追尾解析装置の試作を行った. 得られた結果を要約すると以下のようになる. (1) 各材ともに微小き裂は寿命のごく初期に発生し, 疲労寿命の大部分はき裂伝ぱ寿命で占められる. (2) WT80材およびSCM435H材の場合, 各ひずみレベルの場合ともに寿命の約10%で軟化が飽和する. 一方SUS304材では寿命のごく初期に急激な硬化を示し, その後全寿命を通じて漸時硬化する傾向を示す. (3) 各材の各ひずみレベルの場合ともに破断の50%での微小き裂伝ぱ速度を採用して微小き裂伝ぱ則を導くと, S45C材の場合と同様疲労寿命を微小き裂伝ぱの立場から評価できる. (4) 変動ひずみ下の場合にも基本的には定ひずみ下の場合と同様に取り扱える. (5) き裂発生パターンや伝ぱ形態に組織の影響-例えばSUS304材におけるマルテンサイト変態-が認められたが, それらのき裂伝ぱ速度に及ぼす影響は認められなかった. (6) 画像処理装置を用い, 本年度は主として微小分布き裂を統計的に処理する手法を開発した.
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