本年度の研究経過としては、交付申請書に記掲した実施計画に、おおむね沿ったものであったが、実施計画の約50%程度しか達成できなかったと言える。具体的に取り扱ったテーマは、大別してニつあり、研究成果報告書にまとめた通り、多層層状複合円筒の非定常熱応力問題と、クロスプライ・アングルプライ積層板の非定常熱応力問題である。以上の様な具体的テーマを解析した結果、以下の様な成果が得られた。 1.多層層状複合円筒の非定常熱応力問題に関して具体的に扱った解析モデルは、(1)平面軸対称(一次元)問題、(2)平面非軸対称(平面ひずみ)問題、(3)軸対称問題、の三つであり、これらの各問題に対する解析的方法を確立した。特に、従来、未解明の問題であった軸対称問題(および三次元問題)に対して、解析的な解決をしたと言える。また、これらの各問題に対して、数値計算を実行し、異種材料間の熱源性的相互干渉作用による熱変形・熱応力の評価を行った。更に、されらの問題に対する解析的手法を、従来から非線形問題として、解析的方法の確立が困難であり、かつその報告例も数少い不均質材料の非定常熱応力問題に適用し、不均質材料に対する解析的手法の確立並びに数値計算にもとづく熱弾性挙動の定量的評価を行なうことができた。これは、熱応力問題における大きな成果であると考えている。 2.クロスプライ・アングルプライ積層板の非定常熱応力問題に関して、具体的に取り扱った解析モデルは、片側表面からの非対称加熱による熱曲げの問題、及び両側表面からの対称加熱による面内変形問題である。積層板の各層を構成する豊方性材料の材料特性及び配向角をパラメータとして、上記の積層板が一様表面加熱を受ける場合の熱変形・熱応力を明らかにした。積層板の問題としては、今後、周辺の支持条件を考慮に入れた熱曲げの挙動を解明する必要があると考えている。
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