α相とβ相の水素拡散係数Dについては、Tiー6Alー4V合金では測定ができないので、熱処理によりβ相単体ならびにα相とβ相の2相混合組織を形成することができるnearーβ型合金のTiー17合金を用い、電気化学的透過法により測定を行った。その結果、α相のDは約10^<-10>m^2/S、β相のDは約10^<-14>m^2/Sとなった。これより、β相に主に水素が固溶され、α相では水素が殆ど固溶されず水素化物が生成される可能性が示された。そこで、これを確認すべく、X線回折と薄膜を作成し透過電子顕微鏡観察を行った。水素の吸蔵量をカソード電流密度の量より変化させ、X線回折を行った。カソード電流密度が増加することにより、α相の回折ピークの高さは減少し、β相の回折角度が低角度側に移行し、水素化物であるγ相のピークが現れた。これは水素吸蔵することにより、α相に水素化物が生成し、β相に水素が固溶していることを示している。さらに、電子顕微鏡観察の結果、α相とβ相の界面のα相側にγ相の生成が確認された。次に、α相に生成したへき開面の面指数については、チャンネリングパターンによる試みを行ったが、破面の凹凸が大きく、像は不鮮明であった。そこで、エッチピット法により、面指数の同定を試みた。その結果、最密六方晶の低面である(0001)面と(112^^ー0)面が確認された。以上より、水素は主にβ相を拡散し、α相で水素化物を生成した後、へき開割れを起こし、リガメントの破断を誘発し、最終破壊に至ると考えられ、組織については、初析α相の量が多く、粒径が大きく、さらにβ相が十分かつ連続的に存在する場合、水素脆性感受性が高いと結論される。
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