研究課題
一般研究(C)
初析α相と、これを囲む残留β相/α相の量化、母相組織、母相の形状、初析α相の粒径等の組織を溶体化処理によって変化させ、CT試験片を用いて、陰極電解により水素を吸蔵させながら、一定負荷の水素脆性試験を行った。その結果、初析α相の量が多く、粒径が大きく、その周囲にβ相が十分かつ連続的に存在している組織において、水素脆性感受性が大となった。破面においては、初析の相がへき開割れを呈していた。α相とβ相の水素拡散係数Dはそれぞれ数10^<-10>m^2/s、10^<-14>m^2/sとなり、β相に主に水素が固溶され、α相では水素化物が生成される可能性が示された。そこで、X線回折込と透過電子顕微鏡観察を行った。カソード電流密度が増加することにより、α相の回折ピークの高さは減少し、β相の回折角度が低角度側に移行し、水素化物であるγ相のピークが現れた。これは水素吸蔵することにより、α相に水素化物が生成し、β相に水素が固溶していることを示している。さらに、電子顕微鏡観察の結果、α相とβ相の界面のα相側にγ相の生成が確認された。次に、α相に生成したへき開面の面指数については、チャンネリングパターンによる試みを行ったが、破面の凹凸が大きく、像は不鮮明であった。そこで、エッチピット法により、面指数の同定を試みた。その結果、最密六方晶の低面である(0001)面と(1120)面が確認された。以上より、水素は主にβ相を拡散し、α相で水素化物を生成した後、へき開割れを起こし、リガメントの破断を誘発し、最終破壊に至ると考えられ、組織については、初析α相の量が多く、粒径が大きく、さらにβ相が十分かつ連続的存在する場合、水素脆性感受性が高いと結論される。
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