研究概要 |
最近, セラミックスの利用範囲が急速に拡大しており, それにともない加工性の改善が急務とされている. 本研究申請者らは, これまでダイヤモンド単刃工具を用いて高速マイクロ切削を行うことにより, 脆性破壊によらずに塑性変形型の切りくず生成による超精密切削加工が実現できることを明らかにしてきた. しかしながら, この超精密高速マイクロ切削加工を実用化のレベルで議論するには, ダイヤモンド工具の高温下での酸化あるいは黒鉛化などによる摩耗の増大が大きな問題となる. 本研究では, 切削加工点近傍の雰囲気を適切に制御することにより, 工具の耐摩耗性の維持と寿命の増大をはかることを目的としている. 昭和62年度に行った研究内容をまとめると次のようになる. まず, 大気を遮断した雰囲気中で高速マイクロ切削実験を行うために, 雰囲気制御容器と超精密スピンドルおよび微少切込み装置を用いた切削試験装置を開発した. ついで, 部分安定化ジルコニアを被削材として, 各種加工液中で天然ダイヤモンド工具により高速マイクロ切削実験を行った. 加工液は灯油, 水溶性切削液, 蒸留水, 界面活性剤の4種であり, また, 比較のために乾式切削も行った. その結果, 乾式切削の場合は切削速度の増加ともに急激に逃げ面摩耗が進行するのに対し, 灯油, 蒸留水, 水溶性切削液では摩耗の進行が抑制されることが明らかにされた. また, 界面活性剤では摩耗の速度依存性がなくまた抑制効果も認められないという特徴ある結果が得られた. さらに, 切りくず形態を走査型電子顕微鏡により観察し, その生成機構が金属切削に類似した塑性変形によるものであり, 仕上げ面性状も極めて良好であることが明らかにされた. 以上のように, 本研究の本年度の目的はほぼ達成されたと思われ, 次年度も引き続き研究を進めたい.
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