研究概要 |
本研究では, 湿式研削温度の熱流入割合を解析するために, まず, 砥石をCBC120N100B, 工作物をSKD11焼入れ材とし, 水溶性のソリユブル型研削液を用いた場合の各種条件における発生熱量と接触孤内最大上昇温度を調べた. その結果にJ.C.J.aegerの移動熱源理論を適用して, 湿式研削の熱流入割合を求め, 乾式の結果と比較した. その結果, 乾式の場合の工作物側への熱流入割合は, 切込みが小さい範囲で60〜90%程度, 切込みが大きくなると40〜50%になるのに対し, 湿式では, 接触孤内における研削液が未遷移沸騰状態で10〜40%, 膜沸騰状態では乾式と同じ, 遷移沸騰状態では, 両状態の中間的な熱流入割合を示すことがわかった. すなわち, 研削液が接触孤内で液体の状態として存在する未遷移沸騰状態の範囲では, 発生熱の相当部分が研削液によって除去されることがわかった. 次に, 研削液の希釈度や種類, および工作物の種類を変えて同様な検討を行い, 不水油は低除去速度の領域では, 水溶性研削液よりも発生熱除去効果は悪く, 工作物側への熱流入割合は30〜50%程度になるが, 遷移沸騰状態になりにくいため, 高除去速度領域では逆転し, 良くなることや, 工作物の違いによる熱物性値の変化によって熱流入割合が変わることを見い出した. さらに, これらの結果を基礎的かつ系統的に解析するために, 徴視的に, 切屑生成の際の発生熱の伝熱形態を考え, 乾式の伝熱形態, すなわち, 熱流入割合を基礎として, 湿式の熱流入割合を求める式を導出した. そして, その式を用いて求めた湿式の熱流入割合と, 直接J.C.Jaegerの理論を適用した式から求めた結果とを比較したところ, 未遷移沸騰状態の範囲で比較的良く一致した. このことから, 導出した式を用いて, 乾式の結果から, 湿式の熱流入割合の解析の可能性が見い出されたと言える.
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