カーボン保護膜を有するめっきディスクとスパッタディスク試料に硬い球面及びフェライトとAl_2O_3TiCのヘッドを比較的低速ですべらせる実験を行ない、薄膜ディスクの基礎的な摩擦特性と損傷について調べた。摩擦係数μは一般に荷重に依存しないが、0.01m/s以下の低速域では速度に依存し速度増加でかなり増加した。また、摩擦は潤滑液膜やテキスチャの存在によって影響されない。球面すべりで生ずる損傷は磁性膜の著しい破壊を伴い、摩擦を増加する。球面すべりから求められたカーボン膜のすべり接触部のせん断強さは150MPa前後であった。この値に基づいにヘッドのすべり接触は完全に弾性的と推定された。ヘッドを定速で回転するディスクに繰り返しすべらせるときのμとすべり回数Nの関係を、種々の表面状態を有するディスク試料について調べたところ、μは一般にN増加で増件するが、このμ増加は20nm前後のきわめて薄い潤滑膜によって抑制され、一方、テキスチャの存在によって容易に起り易いことが明らかになった。μはNが大きいときに1.0程度にも大きくなり得る。かかる大きいμ発生の原因の一つは潤滑膜のスティクション作用による場合である。ヘッドの繰り返しすべりによるディスク損傷はカーボンの薄い小片が付着して生じる光学的に黒い少数の微小領域であるにすぎなく、摩擦変化に対応するような機械的損傷は一般に生じない。摩擦変化の主原因は繰り返し摩擦におけるカーボンの変質と考えられるが、カーボンの摩擦耐久性はきわめて優れているといえる。繰り返しすべりにおけるμの変化は複雑であり、Nが大きいときに、N増加によって増加したμが、さらに繰り返しすべりを続けると減少して後、増加する場合も認められた。なお、CS/S繰り返しで生ずる低速域でのμの変化やディスク面損傷は定速繰り返しすべりにおけるμ変化や損傷と本質的に違わないことが明らかにされた。
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