63年度の研究の成果、次の事が明らかとなった。 1.静圧式自動調節絞り付き静圧ねじおよび軸受により構成された1軸の送り装置を設計・作製した。テーブル寸法150mm×300mm、ストロークは100mm、テーブルの駆動にはパルスモータを使用した。 2.静圧機素の駆動には2系統の油圧ポンプを使用した。低粘度の作動油(0.01Pa・s)を使用し、スクイズ効果の減少を計った。 3.使用した静圧機素は、スクイズ効果を減少させるこめに、絞り面、軸受面などの油膜厚さを通常の静圧軸受よりも大きく設計した。 4.静圧自動調整絞りの効果により送り装置テーブルの静剛性は通常の静圧軸受を使用した場合よりも高くできた。 5.テーブルのステップ応答を測定した所、整定時間は0.2秒程度と、かなり速くなった。これは、油膜厚さの増加、低粘度油の使用によるスクイズ効果の減少が動特性向上へ寄与したと考えられる。しかし、実用上充分な応答早さとは言えない。 6.スクイズ効果の一層の低下のために軸受面などの油膜厚さをさらに広げることは作動油流量の極端な増加を招き実現困難である。 7.送り装置の案内精度はサブミクロンオーダであることを確認した。 8.切削試験を行った。切削方法は、被削材(アルミ合金)を送り装置テーブルに取り付けて移動させながらダイヤモンドバイトにより切削する平削りである。切削速度0.3m/min、切込み10μmとした。 9.切削された面の表面粗さはRmax=0.15μmとかなり良好であった。これは、切削速度が低く、ほとんど静的な条件で切削が行われており、送り装置のすぐれた静特性が寄与したためと考えられる。 以上より、静圧式自動調節絞り付き静圧機素で構成された送り装置は静的には充分な特性を示すことが確認できた。
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