進行磁場内における磁性流体の流動に関して、今年度の研究によって次の成果を得た。 1.開きょ内流れの理論解析 片側リニアモ-タのステ-タによって誘起される磁性流体の開きょ内流れを磁性流体の内部角運動量を考慮した基礎方程式を用いて理論的に解析した。その結果、進行磁場の進行方向に対して逆向きの流れが誘起され、速度の大きさは磁場の進行速度に比例し流路底部付近では小さく自由表面付近ではかなり速くなっていることを明らかにした。この結果は実験的に観察される流れの傾向と一致する。また流れを支配するパラメ-タの取る値によっては流路底部付近で順方向の流れが誘起されることや、磁性流体に作用する極性効果による力と磁場の非一様性による力は、それぞれ磁場の進行方向に対して逆方向、順方向に作用することなども明らかにした。 2.光ファイバ-・レ-ザ流速計による計測 磁性流体は非常に光を通しにくい黒色不透明な液体であり、通常型のドップラ-効果を利用したレ-ザ流速計では散乱光の弱さのため内部流動の計測は困難である。しかしながら、直接光を利用し光波長の選択を行えば、ごく短距離間で光が通過する。この点を利用して、磁性流体内部透過し易い波長約800nmのAlGaAs半導体レ-ザ光を用い、レ-ザ2焦点流速計を参考にした新しい局所流速測定法を開発した。これは、レ-ザ直接光が射出している光ファイバの先端間を、トレ-サ粒子が通過するに要する時間を測定することによって局所流速を測る方法である。この測定法を用いた場合、比較的高濃度の磁性流体でも計測は可能であり、これを片側リニアモ-タで印加される進行磁場により誘起される磁性流体の回流開きょ内流れに適用した。その結果、進行磁場印加部では磁場の進行方向に対して逆向きの流れが誘起され、流れの流速分布は、実験範囲において周波数、励磁電流に比例し、表面付近で速く、底部付近で遅くなっていることなどの解析的予測と一致する事実を明らかにした。
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