魚と水力発電用水車の関係は我が国においてはあまり関心がなく、これまでほとんど研究されていない。河川にダムを建設し、既存の水車発電装置を設置すると河川は寸断され、河川魚の生息条件が著しく破壊されることは既に知られている。ダムが低い場合にはしばしば魚道が作られるが、通常建設費がかかるので設置しない。また、魚道を通過する流量は発電に利用できない。しかだって、もし魚が運転中の水車内に自由に通過することができれば河川に棲む魚族の生態系を破壊することなく、河川のいたるところに低落差の水車を設置することができる。現在の高性能反動型水車ランナーはキャビテーション寸前の高負圧下で運転され、ランナー内流速も速い。負圧は魚の内蔵破裂を引き起こし、高速では魚がさかのぼれない。このような条件を考慮して、著者らの研究目的は、落差が1〜2mで、ランナー内流速が遅く、負圧にならない水車ランナーを開発することである。 上記の目的に沿って次のような研究を行った。1.水車ランナーを通過する魚の挙動をビデオカメラおよび写真撮影により観察した。(1)、上流から下流へ移動する場合、(2)、下流から上流へさかのぼる場合。2.水車ランナーを通過する魚にランナーが与える損傷、その他生物学的打撃を検討した。3.水車ケーシングの圧力分布を測定し、水車内圧力分布と魚生存の関係を検討した。4.水車ランナー入口および出口直後の速度分布を測定し、魚が水車ランナーを下流から上流へさかのぼりうる流速の条件を明らかにした。5.魚と水車の関係を研究する研究用水車設備を開発した。
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