研究概要 |
1.透明血管標本の流れの可視化による流れのパターンの観察, 透明化処理した血管分岐部の可視化実験より, 分岐部手前に馬蹄形渦が発生していること, そして, 分岐起始部の外側壁では流れの剥離が起こり得ることなどが明らかになった. 分岐部の1つの枝管に注目すれば, そこの流れのパターンは3つに分けられた. 1つは分岐の外側壁に沿う流れは順方向に下流に向かった. 一方他の2つのタイプは逆流が起こった. 逆流の1つのタイプは, 逆流した流体が壁に沿って主管を横断し, 他方の枝管に流れた. 他方は逆流した流体が分岐起始部で剥離を起こした後, この枝管に連なっている馬蹄形渦に巻き込まれて下流に流れた. このような流れのどのタイプに流れになるかは, 分岐の形状と枝管への流量配分によることが分かった. 2.有限要素法を用いた数値計算. (1)流れの数値研鑽:非定常3次元の流れに対する有限要素法プログラムは現在開発中である. そこで2次元非定常流れに対するプログラム(開発済み)で, 軸対象動脈瘤モデルに対して有限要素法による数値解を求めた. 拍動流の可視化実験の流量波形をフーリエ展開し, 入口端の境界条件とした. 加速相の後期から剥離渦が形成され, 減速相にかけて成長し, 肥大化して下流に押し流された. 瘤の後縁近傍に壁ずり応力が大きくなり, また瘤の下流に最大の壁ずり応力が発生した. :(2)血管壁応力場の数値計算 血管分岐部の血管形状は円形から楕円形を経て亜鈴形に変化している. いくつかの超音波断層写真から血管形状を数量化し, 有限要素法を用いて応力解析をした. 楕円形の断面では, 長軸の壁厚が短軸よりも厚くなっており, 主応力が零になる部分が存在し, 基本的には周方向に正の主応力が作用した. 亜鈴形では短軸近傍に負の主応力が作用した. 3.以上の知見に基づき, 3次元モデルを作成し, 可視化実験及び数値計算を継続中である.
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