研究概要 |
本年度は, 日射吸収媒体による融雪現象について, 人工太陽(陽光ランプ)を用いた融雪に関する実験装置の設計・製作および融雪挙動に影響を及ぼす諸因子の検討を行なった. 日射吸収媒体として黒色炭酸カルシウムを選定し, その融雪に及ぼす様々な挙動の把握を行ない, 本融雪現象のシュミレーションモデル化に対する基礎資料を得た. 特に, 融解した水の挙動が融雪に大きく影響を及ぼすことより, 雪層中での浸透水を雪粒子間の空隙率に占める体積割合である飽和度分布を測定する方法を開発した. その一つは, 高周波電源を用い融雪水の電気抵抗値を測定し, 飽和度を求める方法である. もう一つの方法は, 雪層断面を赤外線写真により, 雪と水の放射率の差より生じる濃淡を数値化したデータを較正値と比較し, その飽和度を算定するものである. 試験雪層面上に, 密度=0.05〜1.0kg/m^2の範囲に黒色炭酸カルシウムを散布し, 春期の日射量である400〜500W/m^2の強さに調節した陽光ランプを光源として照射し, 雪層融解実験を行ない, 融解挙動を検討した. その結果, 散布密度が0.1kg/m^2以下では, 融雪剤が斑点状に集まり, この部分の融雪が阻害され, 周囲に存在する水層の雪層内への浸透が融雪を促進する. 散布密度が0.1〜0.3kg/m^2においては, 比較的均一に融雪の進行が行なわれ, その融雪速度も大きくなる. 散布密度が0.3kg/m^2を超えると散布炭酸カルシウム厚さが大きくなり, その断熱正の増大のため逆に雪層の融解が阻害される結果となった. これらの結果より, 日射吸収媒体を用いた場合の有用な融雪モデル開発に必要な基礎資料を得ることができた.
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