半導体製品や金属とセラミックスとの圧接材など母材の上に薄い膜状物質を形成する複合材が多く使用されているが、これら複合材の熱伝導率や比熱などの熱物性値は適切な測定法が確立されていないため、ほとんどデータがない。集積度の高い電子部品はその冷却法が切実な問題となっている。本研究は、このような層状複合材の熱拡散率を測定する方法を開発し、熱移動解析に必要な熱物性値を得ることを目的としている。得られた研究成果は下記の通りである。 1.一層から三層までの層状試料の表面をステップ状あるいはパルス状に加熱したときの裏面の温度応答から未知の層の熱拡散率を求めるための測定理論を確立した。 2.測定現場で未知の熱拡散率を算出できるようにパソコン用計算プログラムを作成した。 3.上記のプログラムを用いて熱拡散率を計算する場合の問題点について種々検討した。たとえば、熱物性値が非常に異なる物質を層状に組合せた場合、熱拡散率の大きさによっては計算が不可能となる領域があることが分った。 4.また、ステップ状あるいはパルス状のふく射エネルギを試料表面で吸収するために表面にカーボン等を薄く塗布するが、それによる熱拡散率への影響を定量的に求めることが出来るようになった。 5.層状試料の表面をステップ状あるいはパルス状に加熱した場合の裏面の温度応答から試料全体を単層とみなしたときの熱拡散率が算出できる。この値と各層の熱拡散率との関係および単層とみなしたときの熱伝導率と各層の熱伝導率との間の関係について整理し、検討を加えた。 6.ステップ状加熱法およびパルス状加熱法の原理に基づいた測定装置により、二層および三層試料の熱拡散率を測定した。
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