研究概要 |
本研究では, 乱流拡散火災の燃焼音の発生機構を解明する手掛りを得るための実験研究と数値実験を行った. 得られた結果を以下に要約する. 実験研究: (1)組織的構造に支配される火災では, その発生周波数に対応して, 温度とイオン電流の変動に卓越したスペクトルが観察され, 組織的構造を有しない火災と著しく特性が異なる. (2)温度およびイオン電流の変動と遠方音場の変動の間には, 組織的構造の発生周波数で極めて強い相関が存在し, 粗大渦火災に起因する燃焼音が発生する. (3)ノズル出口中心から半径560mmの子午線上の遠方音場における平均および変動音圧の測定とスペクトル解析から, パイロット火災から下流に発達する火災がある低速一様流側では組織構造の有無にかかわらず平均音圧レベルはほぼ等しく, 高速一様流側では組織的構造のある火災で幾分高いこと, また, 子午線上天頂に近付くほど低周波変動成分が単越してくることなどの指向性が存在する. 数値実験: 離散渦法を用いて, 組織的構造に支配される平面せん断流中の離散渦の時間的場所的分布状況を数値計算し, 流れ場の平均および変動特性の把握が可能なことを示した. つぎに得られた離散渦の分布に基づき, 個々の離散渦に2KHzの単極点音源の性質を与え, これに下流方向のイオン電流実効値分布に対応した音源強さを付与して, 半径560mmの子午線赤道上での遠方音場を時間の関数として装置的に積分した. この場合, 組織渦は下流への対流移動とともに隣接する組織渦と全体してスケールを増し, 対応する卓越周波数が減少するので, 流れの方向の任意の点を中心にその代表点におけるせん断層の隔をとり, その範囲内に分布し運動する離散渦からの寄与のみを求めた. その結果, ノズル出口から35mm下流における代表点における数値積分から得られた卓越周波数が, 実験的に測定された組織渦の卓越周波数とよく一致することがわかった.
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