電子デバイスを浸漬冷却する際の二次冷却面(凝縮面)として、浸漬冷却モジュール容器の上壁面を使用することを想定した基礎的研究を行った。供試凝縮面としては幅40mm、長さ120〜310mmの銅製平滑面と2種類のフィン付面(フィンピッチpは0.61mmと1.36mm)を使用し、供試容器内の上部に水平下向きに設置した。供試容器内の下部には発熱素子を模凝するヒータを設置し、供試流体を一定高さまで充填した。供試流体にはR113とメタノールを使用した。実験は供試面が蒸気空間中にある場合と、液中に浸漬されている場合について行ない、両者について供試面に多孔質排液板(厚さ2mm、平均有効孔径0.61mm)を取り付けることによる伝熱促進効果を検討した。浸漬型凝縮においても、低熱流束では凝縮面の下部に蒸気空間が形成された。蒸気空間高さは熱流束の増大につれて減少し、高熱流束では凝縮面に蒸気泡が直接衝突した。この最後の領域では、フィン付面の凝縮熱伝達は蒸気空間型の場合より最大35%促進された。平滑面では浸漬型凝縮と蒸気空間型凝縮の熱伝達特性の差はほとんどなく、多孔質排液板の取り付けによる伝熱促進効果も最大10%程度であった。フィン付面は平滑面に比べて高い伝熱性能を示した。平滑面と比較した伝熱促進率はpが小さいほど、また凝縮物質の間面張力と液密度の比σ/ρが大きいほど大きかった。蒸気空型凝縮と、浸漬型凝縮で蒸気空間が形成される領域については、多孔質排液板の取り付けによってさらに顕著な伝熱促進効果が得られた。多孔質排液板の有効高さはpが小さいほど、またσ/ρが大きいほど大きかった。凝縮温度差5kにおける伝熱促進率の最大値は、R113の浸漬型凝縮について4.5、蒸気空間型凝縮について7.1であった。上述の結果から、浸漬冷却モジュールの上壁面を高性能の凝縮面として使用できることが明らかになった。
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