研究概要 |
昭和62年度の実験結果から通気気泡による熱伝達の促進は、バルク液が飽和温度の場合通過気泡が加熱面滞在中現れる気液界面での蒸発潜熱輸送と気泡通過後流入するバルク液による顕熱輸送によって行われていることが判った。この事実に基づいて、熱伝達の促進モデルを提案し、そのモデルに対する基礎式を導出した。さらに基礎式の解析結果から、通過気泡による熱伝達の促進の特性を明らかにした。 一方実験については、狭い流路内に3-5コの加熱面(それぞれの加熱面への熱流束は独立に制御されている。)を取り付け、下方(上流)で発生した蒸気泡が上方(下流)の加熱面の熱伝達に及ぼす影響について検討した。実験は、次の範囲で行われている。 1.試験流体: 水、 R113 及び R12 2.加熱面の個数: 3-5コ 3.熱流束:q_w=10^3-7×10^4 W/m^2 4.流路の隙間幅: s=1,2,4 mm 5.圧力:p=1- 20 bar. 実験の結果から、下方からの蒸気泡によって上方の加熱面の熱伝達は、熱流束の小さい範囲で著しく促進されるが、上方の加熱面の熱流束が十分発達した核沸騰が発生するような熱流束域では、下方からの蒸気泡の影響を受けなくなる。この結果は、理論解析から予測された結果と定性的に一致することを確かめた。更に、実験結果と解析結果との定量的な比較をするためには、気泡通過時に加熱面上に現れる残留液膜の厚さを測定する必要がある。この液膜厚さの測定については、すでに新しい測定方法を開発しているので、これから測定する予定である。
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