狭い垂直流路内における沸騰熱伝達の促進とその限界を検討するために、人工的に流路内に発生させた蒸気泡と下方(上流)に取り付けられた数個の加熱面から自然に発生した蒸気泡を用いる場合の2種類の実験を行った。実験範囲は、人工的に気泡を発生させた場合、(1)気泡の長さ:1=10、20、30mm、(2)気泡の通過周期:To=0.033-1.0sec(3)流路の隙間幅:S=2-7mm、(4)試験流体:水、R113とエチルアルコール(5)圧力:大気圧、また下方の加熱面から自然に気泡が発生した場合、(1)加熱面の個数:3-5コ、(2)熱流束:q_w=10^3-7×10^4W/m^2(3)流路の隙間幅:S=1、2、4mm(4)試験流体:水、R113、R12(5)圧力:p=1ー20barである。 実験から以下の結果が得られた: 1.熱伝達の促進は、通過気泡の長さに強く支配され、その気泡の長さが大きいほどその促進効果が大きくなる。 2.通過気泡による熱伝達促進効果が現れる範囲は、気泡が加熱面上に滞在する時間と温度伝導率、a、と気泡の通過周期、To、と気泡が加熱面上に滞在中現れる残留液膜厚さ、δ、から決定される無次元量、√<aTo>/δによって与えられる。 3.実験結果を基に、通過気泡による熱伝達の促進モデルを提案し、そのモデルの解析結果から熱伝達促進の特性を明らかにした。 4.実験結果は、理論解析から予測された結果と定性的に一致していることが判ったが、定量的な比較をするためには残留液膜の厚さを測定する必要がある。この液膜厚さの測定については、すでに新しい測定方法を開発しているので、これから測定する予定である。
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