研究概要 |
現在までに行った研究内容と得られた結果は次の通りである. 1.蒸発部と凝縮部が配管(断熱部)によって連結された密閉形ループ熱サイホン装置を製作し, ループ内温度, 作動流体封入量, ループの傾き角および熱負荷を変化させて, ループ内循環流量, 蒸発部および凝縮部内の熱伝達係数およびループ内温度分布を測定した. 作動液体にはエチルアルコールと水を用いた. ループ内循環流量は液体封入量と熱負荷が大きい程増大した. 蒸発部内の沸騰熱伝達係数はループ内循環流速があまり大きくない(20cm/s以下)ためにループ沸騰熱伝達の式でほぼ整理できる. 凝縮部内の熱伝達係数は管底部液溜りを考慮した水平管内膜状凝縮の式によって, 十分ではないが, かなりよく整理できる. 2.ループ内の循環流量を予測するためにはループ内の圧力およびエンタルピ分布(温度分布, ボイド率分布)をループに沿って数値計算し, 凝縮部出口で乾き度が0となり, 計算開始点の圧力とエンタルピがループを1回り計算して得られる圧力とエンタルピの値に等しくなるまで計算を繰り返えさねばならない. この計算は圧力損失の式, ボイド率の式等多くの式が必要であるが, 収〓に非常に時間がかかり, これらの式の評価には不適であり, また計算がかなり困難であることが分ったので, この計算の前段階として, 収〓が容易な開放形熱サイホンに関する実験的および理論的研究を先に行った. 3.ループの上部に気液分離タンクを持ち, 下部に加熱部を持つ, 開放形ループ熱サイホン装置を製作し, 熱負荷を変えて, ループ内循環流量, 圧力および温度分布, および加熱部熱伝達係数を測定した. ループ内循環流量, 圧力および温度分布は理論的に数値計算した結果と加熱部入口のサブクール度が小さい場合, よく一致した. しかし, サブクール度が大きい場合については更なる研究が必要である.
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