本年度は主として、伝熱面形状(平面と凹面)の影響、吹出し孔形状(円形と矩形)の影響及び吹出し角度の影響について研究を行うと同時に、耐熱性の点から将来採用が期待されているセラミックス板についても研究を行った。平面については前年度にある程度の結果がえられている。セラミックス板は多孔質であるため、衝突した冷却剤がその中へしみ込むため、その熱伝達率の測定は困難であったが、伝熱板両面の温度分布を放射温度計で測定し、それを境界条件として伝熱板内の温度分布を理論的に求めることにより、セラミックス板上に噴流が衝突した場合の熱伝達率を求めることができた。以上より次のことがわかった。 平面に比較して凹面上の膜冷却効率は一般に劣るが、膜冷却効率に最も影響を与える因子は吹出し運動量比であり、最適運動量比(0.1)を選べば凹面(曲率半径140mm)においても平板に近い冷却効率がえられる。吹出し孔形状については、吹出し孔断面積が等しい場合、矩形吹出し孔の方が冷却効率は良好である。これは平面および凹面において共に観察された。これは矩形吹出しの方が吹出し流中心部の運動量の減衰が大きいために、吹出し孔下流面に冷却剤が沿いやすいためである。吹出し角の増加とともに冷却効率は減少するが、平板では運動量比が小さい場合のみその影響は顕著であるが凹面ではそのようなことはない。多孔形質板上への衝突噴流の実験に先立って、中実板について実験を行って、従来知られている結果と比較して、本研究の方法で十分正しい結果が得られることを確かめた。多孔質板上の熱伝達率は中実板上のそれに比較して、噴流よどみ点近くでは大きいが、下流に行くにしたがって減少し、中実板上の値以下になる。この傾向は噴流レイノルズ数が大きいほうが顕著である。
|