膜冷却は高温にさらされる物体の最も有効な冷却方法の一つでありガスタ-ビンの翼の冷却に使用されているが、吹き出すい孔から吹き出した冷却剤が主流と混合するため冷却効率は吹き出し孔から下流方向に急激に減少する欠点がある。この欠点を克服するために多くの孔から冷却剤を吹き出す全面膜冷却が提案されている。冷却効率(無次元表面温度)は表面状態のみでなく、伝熱板内の熱伝導および裏面の熱伝達によっても大きく影響されることに注目し、本研究は冷却剤を伝熱板裏面に衝突させることによって膜冷却効率を更に向上させるために行われた。熱伝導率のよいアルミ板と悪いアクリル樹脂板を伝熱板に選び、これに矩形の孔を表面に90°および30°にあけ、主流より30K高い空気を吹き出して表面温度を測定して、膜冷却効率を測定した。一方、伝熱板内を微小な立方体あるいは平行六面体に分割し、3次元の定常熱伝導問題を数値的に解いて実験結果と比較した。噴流のノズル直径をD、ノズル出口から伝熱板裏面までの距離をHとしH/Dを種々に変化させた。その結果、次のことを知りえた。 (1)吹き出し角度Ia=90°および30°において最大の膜冷却効率を与える吹き出し比Mはそれぞれ0.8および0.4である。 (2)伝熱板裏面を断熱状態にすると、膜冷却効率は表面状態によって支配され、Ia=30°、M=0.4の場合の冷却効率はIa=90°、M=0.8の場合に比較して、吹き出し比1/2であるにもかかわらず、その冷却効率は約16%高い。 (3)伝熱板裏面に冷却剤を衝突させると裏面の状態が支配的となり、その膜冷却効率は裏面断熱の場合に比較して約2.16〜2.79倍に向上する。 (4)H/Dの最適値は約6である。 (5)アルミ板に対しては、計算結果と実験結果は非常によく一致するが、アクリル樹脂に対してはやゝよくない。
|