| 研究概要 |
内部に冷却用の液体ヘリウムを内蔵して回転する超電導発電機に代表される液体内蔵回転体の自励振動の発生機構について研究を続けている. 本研究は, 従来ほとんど研究対象とされていなかった, 回転体内部が完全に液体で満たされている場合と, 回転体内部が部分的に液体で満たされている場合でしかも液体の液膜厚さが非常に薄い場合について, 理論と実験の両面から現象解明を目指したものである. 昭和62年度の研究では, 回転体内部が完全に液体で満たされている場合についての基礎理論の構築と実験装置の作成, 実験を行った. 3次元境界層理論をもとに理論を構築し, 回転体内部が完全に液体で満たされている場合でも, 回転体内部が完全に液体で満たされていない場合と同様に, 境界層の存在による内部減衰に起因する自励振動が発生する可能性があることを示すことができた. しかし実験結果からは, 1種類の液体で完全に満たされた液体内蔵回転体では平行モードの自励振動は発生しないことが明らかになり, 現在, この違いについて検討している.
つぎに, ビールス, リボゾーム, ミトコンドリアやタンパク質などの細胞内物質を密度の違いを利用して密度勾配分離を行なうための超遠心分離器で自励振動が発生していて, 対策が求められているとの報告を受け, 水と油のように互いに混ざり合わない密度の異なる2種類の液体で回転体内部を完全に満たして実験を行なったところ, 界面波の存在により自励振動が発生することが観察された. 界面波に起因する液体内蔵回転体の自励振動に関する研究はこれまでに例がなく, 興味深い実験データが得られた. 現在, この現象について, 理論解析を行なっているところである. 次年度には, 回転体内部が部分的に液体で満たされている場合でしかも液体の液膜厚さが非常に薄い場合について, 理論と実験の両面から現象解明を目指す.
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