研究成果報告書は7章より構成されている。第1章は研究の目的で、内部に冷却用の液体ヘリウムを内蔵して回転する超電導発電機、封入した液体によって翼の冷却を行なうことを目的としたタービン軸やビールス、リポゾーム、ミトコンドリアやタンパク質などの細胞内物質を密度の違いを利用して密度勾配分離を行なうための超遠心分離器などのような液体を内蔵して高速回転する回転体で発生する自励振動についての概略、本報告の位置づけと本研究で行なっ項目の概略が述べられている。第2章は従来の研究で、従来行われてきた、気液界面の自由表面波に起因する自励振動に関する主要な論文の紹介を行なっている。ただし本研究のように、混ざり合わない密度の異なる2種類の液体の界面に発生する界面波に起因する自励振動の発生機構に関する研究はほとんど行なわれていない。第3章は液体の運動に関する解析で、非粘性を仮定して、回転軸が直線的にふれまわり運動する場合の液体の運動について定式化を行ない、界面振動の固有振動数と固有モードについて解析を行なっている。第4章は、回転軸系の安定性で、第3章の結果から液体が回転軸に及ぼす流体力を解析的に求め、回転軸の運動方程式にリンクさせて、付加質量をも含んだ系の固有振動数と自励振動の発生領域を求める手続きについて記述している。第5章は、実験で、実験装置の概略、実験条件、実験方法および測定法について記述している。第6章は、計算結果と実験結果の比較で、第4章で得られた実験値を比較し考察を加えている。第7章は結論で、本研究で得られた成果をまとめている。本研究の結果、混ざり合わない密度の異なる2種類の液体で完全に満たされた中空回転体で発生する自励振動の不安定領域は、密度比に強く依存し、密度比が小さくなれば不安定領域は上方に移動し、その幅も大きくなることが明らかになった。
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