本研究では、生物の筋肉をモデルとした微小集積形静電モ-タの開発を目標とし、基礎として静電モ-タの基本素子を提案し、その性能について検討することを目的とした。 実用レベルの出力を得ることを主眼として、まず小形化に適した静電モ-タの基本構造を提案した。この静電モ-タは、誘電体を一対の対向する電極がはさみ込む構造をしており、電極間に電圧を印加すると誘電体が対向する電極間に引き込む力が働き、この力を利用してスライダを駆動するようになっている。 次にその推力発生の理論式を導出した。さらに理論式に基づいて発生推力の増強法を検討した。この結果基本素子の発生推力を増強するには、(1)スライダの比誘電率を大きくする、(2)スライダと電極のギャップを小さくする、(3)電極とスライダの幅を大きくする、(4)印加電圧を大きくする、(5)スライダの厚さを最適値にする、(6)ギャップ充槇材の比誘電率を最適値にする、という条件を満足すればよいことが分かった。 また推力を増強すべく、基本素子を集積化するには電極の長さを短くし、かつ電極間内外の電界密度の差を大きくすればよいことが分かった。 さらに静電モ-タの拡大基本素子を用いた実験によりスライダの挿入量に対する静電容量の変化量の比(推力係数)を測定したところ、推力係数は電極へのスライダの挿入量に関わらず一定である等、理論通りの結果が得られ、理論式の妥当性が確認された。 本研究ではこのように静電モ-タの開発を目標としたが、理論の面からまた基礎実験からも、現在の加工技術を用いて適切な形状に製作すれば、十分実用レベルの出力が得られることが分かった。
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