本研究における具体的検討課題は、(1)最適観測器配置の決定、(2)動的状態推定の性能評価、(3)階層型状態推定器の構成、(4)中間母線を考慮した推定手法の開発、に大別され、それぞれの成果要旨は次の通りである。 1.状態推定に際しての最適観測器配置については、従来よりの開発アルゴリズムを実規模系統に適用し、候補観測器の分散をも考慮する手法が有効なことを明らかにすると共に、観測器冗長度に関する指針を得ることができた。 2.実規模系統を用い、動的推定器の詳細な性能評価を実施した結果、静的な場合と比較し、少なくとも数倍の精度向上が可能であるとの知見が得られた。 3.階層構造を有する状態推定法に関しては、初めに目的協調法に基づく静的推定に対するアルゴリズムを確立したが、系統一括推定による場合と一致する結果が得られるとの、著しい特徴を有することが明らかとなった。更に、同手法の動的推定への拡張について検討を加え、様々なシミュレ-ションにより、近似的な方法となるものの開発アルゴリズムの有効性が確認された。 4.精度向上の観点から不可欠と考えられていた、中間母線の考慮についても考察を加え、階層型推定器においてもその機能を有することが可能となった。 最終的な検討の結果、階層型動的推定器が総合的に優れた性能を有していることが明白となった。特に、必ずしも計算機システムの並列化が必須のものではないとの知見が得られ、その有用性が一層明確になったものと考える。更に、各部分系統では小規模の推定計算で済むこととなり、観測器最適配置、推定器最適化機能に加え、異常検出・同定アルゴリズムの適用等についても、その実現が容易なものとなる。
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