研究概要 |
従来, 送配電系統の高調波対策としてはLCフィルタが多く採用されてきた. しかし, LCフィルタは系統インピーダンスとの並列共振回路を構成し高調波が増大するという欠点がある. 一方, 次世代の高調波抑制装置として有望視されている電力用能動フィルタはLCフィルタの問題点をすべて解決できる反面, 初期コストや運転コストの点でLCフィルタに劣る. 本研究は, こうしたLCフィルタと電力用能動フィルタの問題点を同時に解決した新しい原理に基づく高調波抑制装置の開発を目的としている. これは電圧形PWM変換器を変圧器を介して送配電線と直列に接続し, さらに高調波発生源と並列にLCフィルタを接続したシステム構成に特長がある. ここで, PWM変換器は基本波に対しては零インピーダンスとして動作し, PWM変換器には基本波電圧は印加されない. 一方, 高調波に対しては純抵抗として動作し, PWN変換器はLCフィルタの高調波補償特性を改善し, 電源電圧高調波に起因する高調波がLCフィルタへ流入するのを阻止する. 本研究で得られた成果は以下のとおりである. 1.20kVAの実験システムを製作し, 優れた補償効果を実験により確認した. 即ち, 補償特性は系統インピーダンスの影響を受けにくく, LCフィルタと系統インピーダンス間の反共振が存在しない. また, 電源電圧に高調波成分を含む場合でも高調波電流はLCフィルタに流入しない. 2.電圧形PWM変換器の容量は三相サイリスタ整流回路(高調波発生源)の2%である. これは負荷の高調波電流がLCフィルタに流入した時に生じる電圧歪み率で定まる. 実験に用いたLCフィルタのQは14であるが, 実規模の大容量LCフィルタのQは50〜80であるので, 電圧形PWM変換器の所要容量は三相サイリスタ整流回路の1%以下になる.
|