この研究は針端コロナ電流による多地点地上電界の長期連続測定と雷雲下の地上付近における空間電荷発生の時間的推移の検出から、雷雲の規模とその下における電力施設周辺の電界の実態を明らかにすることを目的とする。本研究で得られた主な成果の概要は次のとおりである。 1.河北潟干拓地での針端コロナ電流多地点観測の結果からデ-タ処理を行い、冬季雷雲下の地上電界地域分布を推定する方法を開発した。 2.初年度1方向から、63年度以降は2方向から同時に、それぞれ複数の。VTRにより雷放電を観測し、対地雷撃地点を標定した。 3.室内模擬実験と屋外比較実験から、針端コロナ電流パルスはコロナ放電作用による電界値そのものを表していることを立証した。 4.自然雷が発生した時点の地上電界分布は、最終年度までに61例得られ、これらをデ-タベ-スとして整理した。この結果から、河北潟干拓地周辺では、負極性の地上電界の占める割合が約30%を超えると正、負の雷放電が混在するという冬季雷の特徴が指摘できた。 5.合計11例の正確な落雷地点の標定と地上電界分布との相関性を検討した結果、冬季雷においては、対地雷撃放電の発生地点は地上電界分布の正負極性の境界付近あるいは両極性が混在する地域に存在することが結論され、電撃予測に関する重要な基礎資料を得た。 6.名古屋地区の夏季雷の発生時間帯は午後に限られるのに対し、北陸地区の冬季雷は昼夜を問わず発生していることが指摘できた。 7.省電力型空間電界計を試作して地上高0、5、10mの空間電界を実測し、空間電荷密度が数nC/m^3であることを算出した。地上電界の上昇・下降に伴い空間電荷密度は履歴をもつ時間的推移が認められた。 8.地上高10mの棒電極先端近傍の電界は同高度の空間電界が4kV/m以上の電界に達すると、その約1/2に低減される。
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