研究概要 |
電力系統の計画および運用においては, 電力潮流計算と過渡安定度計算は二大基本課題である. 本研究では, この内の過渡安定度計算に関して, エネルギー関数法の実用化に関する検討を行なった. まず, 古典モデル(過渡リアクタンス背後電圧一定の発電機モデルおよび定インヒーダンスの負荷モデル)での新しい高速化手法を, 数式処理言語のREDUCEを用いて開発した. これにより, 従来, 微分方程式をルング・クッタ法等で数値的に解いていたものが, テーラー級数展開の解として簡単に得られるようになり, 高速化がはかられた. 元来, 回転子角と角速度のテーラー展開解は, 2次項位までは, 比較的容易にできたが, それ以上の次数になると非常に複雑となり, 手計算で行なうことには無理があった. 本研究では, このテーラー展開の係数計算を, 一般の人工知能言語であるREDUCEを用いて行なうことを提案した. これに関する研究は, 昭和62年4月の電気学会全国大会および昭和62年7月の電気学会電力技術研究会にて発表し, 電気学会論文誌(B分冊)昭和62年7月号に掲載となった. また, 国外においても, 昭和62年7月に西ドイツで開催されたIFAC第10回世界大会で発表した. 次に着手した問題は, エネルギー関数法の信頼度の問題である. この研究の第一歩として一機系での視覚的な研究を行なった. すなわち, 一機系の安定限界曲線と解軌道をCRT上に描き, それをプリンタ出力して検討した. この視覚的研究により, 従来考えられていたのとは別な過渡安定度評価式RIDGEというものが見いだされた. 現在最も進んでいる垣本, 大沢, 林法は第二動揺安定度等に問題があったが, 今回開発した手法では可能となった. この研究も, 昭和62年4月の電気学会全国大会ならびに昭和62年7月の電気学会電力技術研究会で発表され, 昭和63年6月の電気学会論文誌に掲載決定となった.
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