従来・過渡安定度計算は、シミュレーションによる方法が用いられているが、エネルギー関数による研究もなされている。エネルギー関数による安定不安定の判別は臨界エネルギーを同定し、動揺中の事故除去後の系統構成に対するエネルギーを、臨界エネルギーと比較することにより行なわれる。この臨界エネルギーに対して、さまざまな同定法が考えられてきたが、最も新しい研究では、垣本-大沢-林法と呼ばれる手法が有力である。エネルギー関数法は、数多くの研究がなされてきたが、実際の運用、計画時には、今もって従来法(試行錯誤的シミュレーション法)に置き代わって用いられることは非常に少ない。その理由の一つとして、解の信頼性の問題が挙げられる。本研究では、信頼性の乏しい原因として、第二動揺や、減速脱調を考え、多くのグラフィック画面出力結果を考察することによって、新しい安定限界同定法(RIDGE理論と呼ぶ)を開発した。この方法は、従来の手法と異なり、システムの安定限界に明確な限界を与えるものである。) 上で延べたRIDGE理論の特徴は、現在最も進んだ方法として知られている垣本-大沢-林法の欠点を解決するものである。すなわち、垣本-大沢-林法では、事故継続中のシミュレーションを用いて、第一動揺で脱調することを仮定していたが、第一動揺で脱調しない様な場合または、第二動揺で脱調してしまう場合には問題があった。開発されたRIDGE理論でこの問題が解決された。また、最近、エネルギー関数の精度向上に関して、系統分離というものは、脱調する個別の発電機の過渡エネルギーに依存するということが報告されているが、その脱調する発電機の同定が問題であった。本研究では、RIDGE理論で、その脱調発電機を同定できることを見出した。また、前処理計算としてかなりの計算時間を要する縮小Y行列を用いない手法も合わせて開発した。
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