炭酸ガスレーザを小形化することを最終目標として本研究を進めている。そのためには放電空間に注入する電力密度を高めるのが有効な方策である。しかしながら単に印加電圧を高めるのみで注入エネルギーを増大させると、レーザ発振に有害なアーク放電に移行するのみである。アーク放電には放電の足となるアークスポットがある。このアークスポットが形成されるより早く電源の極性を変化させる、謂ゆる、高同波放電が有効な一手段と云える。他の方法としては、無声放電を用いるのが良い。無声放電は電極-誘電体-放電空間-誘電体-電極の構造を有し、本質的に放電が1個所に集中することは不可能な構造となっている。今年度はこの電極構造において生ずる放電によって生ずる正イオンの集団運動の性質を調査しようとした。そのために、上述電極構造において、電極一方を真空容器と兼用させ、そこにサンプリング用の小孔を用意した。イオンシース内のイオンは小孔を通して10^<-5>Torrの真空部分に入り込み、そこに設置された4重極質量分析器で分析されて、イオン種の同定が行われる。この方式であると、実用機で考えられる100Torr近くの圧力で放電させることは、質量分析器の動作圧の上限10^<-4>Torrを越えてしまうので、不可能であることは分かっていたが、1Torr程度の放電圧力での結果は得られる。これによって無声放電空間には、封入ガスである。CO_2、CO、N_2、の各イオンの存在が確認されたが、封入ガスの1つであるHeのイオンは検出されなかった。これは多分、イオン検出感度が不十分なことと、Heの電離電圧が高いために、相対的に生成量がちいさいことに起因する。この他今年は、電子・イオン連続の方程式、ポアリンの方程式を無声放電の境界条件下で解いて、電子、イオン、電界の空間分布を決定することを試みた。
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