昨年度は、Al_3Ta金属間化合物膜をCo-Sputter法によって作成し、化学量論的な化合物膜を得るための作成条件とその電気的特性や結晶性に関する検討を行った。昨年度の成果に基づき本年度は、このAl_3Ta、膜をSiLSIメタライゼーションにおける電子材料として適用ための基礎的検討を行った。最初に、Al_3Ta膜をSiウェハー上に堆積させる事によって構成したAl_3Ta/Si直接コンタクト構造の安定性を成膜時の基板温度との関連で検討した。その結果、Al_3Ta膜を無加熱Si基板上に成膜した場合、Si中へのAlスパイクもAl_3Ta膜中へのSi拡散も実質的に生じない極めて鋭い界面分布を得る事ができた。しかし、基板温度を増加させて成膜した場合には、Si中へのAlスパイクの形成は充分に抑制できるが、Al_3Ta膜中へのSiの拡散は完全には抑制できない事が判った。この理由は、Al_3TaのSi上への成膜上に、TaがSiと選択的に化合する事によってSi最表面にシリサイド結合を含む極めて薄いTa層がまず形成される事となり、この中間Ta層が結果的にSi基板側への拡散バリヤとして機能するためと推察された。次に、この中間Ta層の厚さを増加させれば拡散バリヤとしての機能を補強できるものと考え、約300〓のTa層を人為的に介在させたAl_3Ta/Ta/Siの3層コンタクト構造を構成し、熱処理に伴う界面反応や界面での相互拡散の問題をオージェ電子分光分析によって検討した。その結果、この3層コンタクト構造では、少なくても500℃までの熱処理温度であればコンタクト特性を劣化させる様な不必要な反応や拡散が生ぜず、充分に安定である事が判った。 従って、高融点金属間化合物膜としてAl_3Ta膜を用いる事で、SiLSIメタライゼーションにおける安定なコンタクト構造のあり方を示す事ができたので本研究の目的は当初の予定の通りほぼ達せられた。
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