研究概要 |
1.WO_3薄膜の不純物拡散用マスク特性 (1)P型Si基板へのP拡散に対するWO_3膜のマスク効果を調べた. その結果, ドーパントとしてP_2O_5を用いた気相拡散法で, WO_3膜の良好なマスク特性を得た. P拡散に対するWO_3膜の阻止能は, 従来用いられているSiO_2膜にほぼ匹敵し, また拡散フロントの一様性も良好であった. (2)n型Si基板へのB拡散に対するWO_3膜のマスク効果の予備的実験を行った. その結果, B_2O_3を用いた気相拡散法で, 十分なマスク効果が確認された. しかし, このマスク効果はWO_3膜の作成法によって異なり, RFスパッタ法によるWO_3膜のマスク効果は大であるが, 電子ビーム蒸着法によるそれは非常に小さかった. 今後の検討が必要である. 2.WO_3薄膜の選択酸化用マスク特性 Si基板上に作成したWO_3膜の膜厚をいろいろかえて, Siのドライ酸化に対するWO_3膜のマスク効果を調べた. その結果, WO_3マスクはSi基板上のSiO_2膜の生成をかなりの程度抑制することがわかり, とくに酸化の初期段階においてその効果は顕著であった. しかし, SiO_2膜の生成を完全に阻止することが難しいことも判明した. また, WO_3マスクにおおわれたSi基板上のSiO_2膜の成長から, WO_3膜におけるO_2の拡散係数がSiO_2膜の値の約8倍であることなど, WO_3膜の選択酸化に対する基礎的なデータを与えることができた. 3.今後の研究の展開 1.で述べたWO_3膜の選択拡散特性は, WO_3膜が電子線レジスト特性もあわせもつことから, Si微細加工における不純物拡散プロセスの簡易化に貢献できると考えられる. このような観点から, 電子線レジスト特性を利用して, WO_3膜の微細パターンマスクを作成し, その不純物拡散に対するマスク特性を検討する予定である.
|