研究概要 |
InP表面に紫外光で励起したアンモニアによる表面処理を施した後, 金属電極を形成した, いわゆるMIS形ショットキダイオードを試作し, その電気的特性を測定した結果, この処理により, InP表面に形成されるエネルギー障壁の高さが0.2eV以上高くなることが判明した. この方法はいくつかの素子に応用可能であるが, その1つとしてInPを用いたMIS形太陽電池を試作し, 光起電力特性を評価した. その結果開放電圧が増加することがわかったが, 従来報告されている酸化膜を用いた素子の値と比較した場合, 現在のところ小さい値にとどまっている. 厚い窒化層の形成は, 現在のところ認められていない. そこで, 紫外光で励起したアンモニアによる表面処理にひきつづいて, シランとアンモニアを原料とした光CVD法によりシリコン窒化膜を連続的にたい積させてMISダイオードを作り, その表面特性(界面特性)を評価した. その結果, 紫外光で励起したアンモニアによる表面処理で, フラットバンド電圧すなわち界面に存在する固定電荷の量が減少すること, ならびに界面準位密度が低くなることなどが確認できた. 以上のように, ショットキー接触による評価の結果とMISダイオードによる評価の結果は相互に矛盾しておらず, 本研究において提案した方法が, InP表面の特性を改善するために有効であることが実証された. 残念ながら当該研究機関にはX線光電子分光装置などの表面分析装置が設置されていないためこれらの結果を裏付けるデータが無く, 単に電気的特性からの検討にとどまっている点に問題を残している.
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